むし歯は「完治」しないって本当?歯科治療の目的と正しい向き合い方
「むし歯は一度なったら、二度と元の健康な歯に戻ることはない」――この事実をご存知でしたか?
歯科医院でむし歯治療を受けた後、「これで完治した!」と思いがちですが、実は医学的に見るとそうではありません。
歯にできた穴を埋めても、それは病気になる前の状態に戻ったわけではないのです。
この記事では、多くの人が誤解しているむし歯治療の本当の意味を掘り下げ、なぜむし歯が「完治」しないと言われるのか、そして私たちがむし歯とどう向き合うべきかを詳しく解説します。
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Contents
1. むし歯治療の本当の目的:完治ではなく「進行停止」
そもそも「完治」とは、病気やケガが完全に治癒し、元の健康な状態に戻ることを意味します。
例えば、風邪が治ったり、切り傷がふさがったりするような状態です。
しかし、むし歯治療はこの「完治」とは根本的に異なります。
むし歯は、ミュータンス菌などの細菌が作り出す酸によって歯の表面(エナメル質)や内側(象牙質)が溶かされていく病気です。
一度溶けてしまった歯の組織は、残念ながら自然に再生することはありません。
そのため、歯科医師が行う治療は、以下のような目的で行われます。
- 病巣の除去:細菌に侵された歯の軟らかくなった部分を専用の器具で丁寧に削り取ります。
- 穴の修復:削った部分を金属やセラミック、レジン(プラスチック)などの人工的な材料で埋めます。
これらの治療は、あくまでむし歯の進行を食い止め、それ以上歯が溶けるのを防ぐためのものです。人工物で補うことで、歯の機能(噛む力など)を回復させ、さらなる悪化を防ぎます。
しかし、これは「歯を元通りにする」ことではありません。元の健康な歯に戻るわけではないため、「完治しない」と言われるのです。
2. むし歯を放置することの大きなリスク
「完治しないなら、治療しても意味がないのでは?」と考えるのは非常に危険です。
むし歯は放置していても自然に治ることはありません。
むしろ、症状はどんどん悪化し、やがて取り返しのつかない状態になります。
放置することで生じるリスクは以下の通りです。
リスク①:激しい痛みの発生
むし歯が進行して歯の神経(歯髄)まで達すると、細菌が神経に感染し、激しい痛みを伴う炎症を引き起こします。
こうなると、日常生活にも支障をきたすほどの耐え難い痛みを感じるようになります。
リスク②:歯の神経を失う「根管治療」
神経までむし歯が進行してしまった場合、神経を抜く「根管治療」が必要になります。
根管治療では、歯の根の中にある神経や血管をきれいに取り除き、その管の中を消毒・洗浄して薬剤を詰めます。
神経を抜いた歯は、水分や栄養が行き届かなくなり、もろく、割れやすくなります。
また、歯茎に歯が付いているだけの状態になるため、結果として歯が抜けやすくなるなど、健康な歯と比べて寿命が短くなります。
リスク③:歯の喪失と全身への影響
根管治療でも対応できないほどむし歯が進行してしまうと、最終的には歯を抜かざるを得なくなります。
一度歯を失うと、その部分を補うためにインプラントやブリッジ、入れ歯などの治療が必要になり、時間も費用も大きくかかります。
さらに、むし歯菌は歯だけでなく、血管を通じて全身に広がり、糖尿病や心臓病、脳梗塞などのリスクを高める可能性も指摘されています。
3. 初期むし歯と唾液の力:自己修復の可能性
象牙質やエナメル質にまで到達したむし歯は、歯科医院での本格的な治療が必要です。
しかし、ごく初期のむし歯(CO:シーオー、要観察歯)であれば、歯を削らずに経過観察する場合もあります。
これは、歯の表面のごく浅い部分が白く濁っているだけで、まだ穴が開いていない状態のむし歯です。
この段階であれば、再石灰化(さいせっかいか)という自然治癒の力が期待できます。
再石灰化とは、唾液に含まれるカルシウムやリン酸が、溶け出した歯の成分を再び取り込んで修復する働きです。
フッ素を配合した歯磨き粉を使ったり、キシリトール入りのガムを噛んだりすることで、この再石灰化を促進させることができます。
ただし、これはあくまで初期の段階に限られた話です。穴が開いてしまったむし歯は、再石灰化だけで元の健康な状態に戻ることはありません。
4. むし歯は「治療」よりも「予防」がすべて
一度むし歯になってしまった歯は、もろく、再びむし歯になるリスクが高まります。
また、治療した詰め物や被せ物と歯の間に隙間ができ、そこから二次的なむし歯が発生する可能性も少なくありません。
つまり、むし歯治療は「終わり」ではなく、「新しいスタート」なのです。
このことから、むし歯は「治療すること」よりも「むし歯にならないようにすること」が圧倒的に重要であるとわかります。
むし歯を予防するための基本は以下の2つです。
基本①:毎日の丁寧な歯磨き
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも活用して、歯垢(プラーク)を徹底的に除去することが大切です。
特に、歯と歯の間や奥歯の溝など、磨き残しが多い部分を意識して磨きましょう。
基本②:歯科医院での定期的な検診とクリーニング
セルフケアだけでは、どうしても磨き残しが発生します。
歯科医院では、専用の器具を使って、歯石や着色汚れをきれいに除去するプロフェッショナルクリーニング(PMTC)を受けられます。これにより、むし歯や歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。
また、定期検診では、むし歯の早期発見や、歯磨きのクセを指摘してもらうことで、より効果的な予防につなげることができます。
むし歯になってから後悔するのではなく、日頃から「予防」を意識し、自分の歯を一生使い続けるためのケアを始めましょう。
健康な歯は、あなたの笑顔や食生活、ひいては全身の健康を支える大切な財産です。この機会に、ぜひかかりつけの歯科医院を見つけて、定期的なケアを始めてみませんか?
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